発電機のメンテナンス項目一覧
非常用発電機はエンジンを使用する構造上、定期的にメンテナンスをしないといけません。
車やバイクも点検整備をしないと、不具合を起こしたり、大掛かりな故障の原因になります。
非常用発電機の構造
非常用発電機は燃料を爆発させてエンジンを稼働し、その動力を使って発電する構造です。
発電の仕組みはエンジンの動力を使うという事までは車などと共通していますが、非常用発電機のエンジンは発電設備(ジェネレーター)を回す事だけに特化しています。
一般的な乗用車はタイヤを回すためのクランクシャフトを動かす力の一部を使って発電しています。
最近流行のハイブリッドカーの動力用バッテリーは、ブレーキをかけた時の熱伝導力(回生エネルギー)を使って発電します。
車で例えた場合、一番近いのが日産のノートEパワーです。
ノートEパワーはエンジンで発電のみを行い、その電力で駆動用モーターを動かしています。
エンジンでピストンを動かす力を全て発電に費やす構造が非常用発電機です。
メンテナンスの重要性
先述で非常用発電機は、日産のノートEパワーの構造に近いと紹介しました。
仕組み自体は共通点が多いのですが、最新エンジンを搭載している乗用車とは違い、非常用発電機のエンジンは昔ながらの構造が単純なディーゼルエンジンです。
設置義務がある大きな施設で導入されている非常用発電機はほぼ100%がディーゼルエンジンモデルです。
(小型自家発電機はガソリンエンジンモデルもあります)
極端な例え方をすると、非常用発電機は20年以上前のトラックに近いようなスペックのエンジンを使用しています。
構造が単純なディーゼルエンジンは、燃焼室で綺麗に軽油を燃やしきれず、燃えかすが発生しやすいです。
ディーゼルエンジンの燃えかすはカーボンススになって燃焼室や排気口周辺に付着していきます。メンテナンスをしないと、始動不良を起こしたり、エンジンがかかっても本来の性能を発揮できず最悪緊急停止(エンスト含む)してしまいます。
古いディーゼルエンジンのトラックを何もメンテナンスせずに放置させると、エンジンをかけようとしてもスムーズに始動しない症状になってしまいます。また、エンジンがかかっても、アイドリングや吹け上がりが安定しないのと同じです。
負荷試験の必要性
非常用発電機は東日本大震災後の法改正で1年に1回の法定点検の際に30分以上の負荷試験を行うように義務付けられました。
非常用発電機は30分以上かつ30%の負荷をかけて運転することで、燃焼室の温度が上昇して、カーボンのススを燃やしてクリーンナップする効果が期待できます。
従来の無負荷運転のようにエンジンをかけるだけでは、燃焼室の温度が上がらず結果的に燃えかすのカーボンススが増やすだけで逆効果になってしまいます。
負荷運転だけ行えばいいものではない
非常用発電機は負荷運転を行う事が必要不可欠ですが、それだけをやっていればいいものではありません。
車やバイク、その他エンジンを使う工業機械などと同様に、定期的にオイル交換をしたり、始動用の蓄電池の電圧をチェックすることが必要です。
また、電子系の部品の故障など長年使っていくと様々な不具合の懸念が出てきます。故障リスクを最小限に抑えるためにも、状況に応じてオイル交換やバッテリー交換、電装系の部品のチェックや配線等の確認を行い、いつ災害が起こっても問題なく稼働する状態を維持しないといけません。
メンテナンスは何より自己防衛が目的
非常用発電機は1年に1回の点検と負荷試験を行えば、法的罰則を受ける事はありません。
しかし、点検整備の目的は、法律に適合させるものだけではなく、有事の際の火災等のリスクを最小限に抑える事です。
法に基づいた点検だけ受けていても、その他のメンテナンスを一切せずにトラブルが発生して被害が拡大すると世間からは許してもらえません。
正しくメンテナンスをするのは、その施設の安全性を確保して、万が一被害者が出るような事故や災害が起こった時に責任回避するための自己防衛のためにも必要な事です。